合格結果までの時間

結果発表前の心理状態

人生をかけた挑戦の結果を待つ時間ほど、これほど長く感じるものは他にないかもしれない。期待と不安が複雑に入り混じり、心は静けさを失い、小さな出来事にも過剰に反応してしまう。

「もし結果が望んだ通りではなかったらどうしよう……」。そんな思いが頭を何度も巡り、ふとした瞬間に心が押しつぶされそうになる。その感覚を、私は人生で初めて経験した。

その結果が自分の人生の大きな転機となるものであればあるほど、プレッシャーは一層増していく。どんな楽しい出来事も上の空で過ぎ去っていく。そして、そんな自分に気づくたびに、さらに落ち込むという悪循環に陥ってしまうのだ。

頭の中には、自分の受験番号が見つからない場面が何度も浮かんだ。そのたびに胸がぎゅっと締めつけられるような感覚を覚え、時には体が震えるほどの不安に襲われた。「もしかすると、結果を見る勇気さえ持てないのではないか……」。そんな考えがよぎることさえあった。

しかし、私はその不安に押し流されるだけではいけないと感じていた。どんなに結果が怖くても、未来に向けて準備を進めるべきだと思ったのだ。少しでも健やかな心で結果発表の日を迎えられるようにするために、私は自分にできる工夫を探し始めた。

合格発表日を楽しみにする準備

結果発表を待つ時間を、ただ不安に耐えるだけのものにしない――これが、私が見つけた最初の答えだった。そのために実践したのが、「合格発表日を楽しみにする準備」をすることだった。

たとえば、もし結果が良かった場合の未来をイメージし、その未来を祝うための準備をしてみる。私は、合格した大学のグッズを事前に注文し、結果発表後に自分への入学祝いとして手元に届くよう手配した。ロゴが入った文房具や記念品――それらは、願いが叶ったときの思い出の品として、一生手元に残る大切なものになるだろうと感じた。
グッズを実際に手にする瞬間を想像すると、心にのしかかっていた重たい感覚が少しだけ和らいだのを覚えている。

こうして、ただ待つだけの時間を「コントロールする時間」に変えたことは、私にとって大きな発見だった。たとえ小さなことでも未来に目を向け、期待を育むことで、不安を和らげることができるのだと気づいた。

自分と向き合う時間を作る

不安を紛らわせるだけでは、結果発表を待つ日々を乗り越えることはできなかった。必要だったのは、不安を避けるのではなく、心の奥底にある感情と向き合うことだった。つまり、自分自身を見つめ直す時間を作ることが求められていた。

そんなとき、私を助けてくれたのが物語だった。特に、「宇宙兄弟」の主人公ムッタの姿は、結果を待つ私の心に寄り添ってくれるようだった。

ムッタは、宇宙飛行士という夢に向かいながら、何度も壁にぶつかり、葛藤や不安に揺れ動く。そんな彼の姿には、「もし失敗したらどうしよう……それでも進むしかない」という彼の心情が、自分の姿と重なるのを感じた。彼の物語を読むことで、自分の心に渦巻いていた不安やもやもやを整理することができた。

また、実際の宇宙飛行士たちがどのように選抜試験を乗り越えたのかを描いた書籍、「宇宙飛行士選抜試験 ファイナリストの消えない記憶」を読んだことも、大きな助けになった。どれだけ努力をしても結果が保証されるわけではない。そんな厳しい現実の中で、それでも自分を信じ、進むべき道を見据えて挑む人々の姿に触れたとき、私も「進み続けよう」と思えるようになった。

結果発表までの時間を、「未来」に向けて不安を募らせるだけでなく、「自分」と向き合う時間に変える。その時間は、私にとって不安をエネルギーに変えるための貴重な経験となった。そして、この不安を抱えながら過ごした時間は、結果がどうであれ、この先の自分にプラスの影響をもたらしてくれると確信している。

10年越しの挑戦
この大学院受験は、大学受験に失敗した過去の自分の無念を晴らす10年越しの挑戦だった。その思いが私を支え、不安を乗り越える力を与えてくれたのだ。
そんなことを考えていた2024年11月29日20時46分、試験対策でほぼ毎日利用していたお気に入りのカフェから。

宇宙飛行士選抜試験 ファイナリストの消えない記憶 (SB新書) [ 内山 崇 ]