「最近、声が落ち着いてて“安心感ある”って言われたんだよね」
そんな何気ない一言に、「え、自分の“声”ってそんなに印象に残ってるの?」と驚いたことがあります。思えば、仕事のプレゼンや初対面の挨拶で、相手の反応が良かった時って、意外と“声の出し方”を意識していたかも…。
こんな風に、“話し方”ひとつで自分の印象がガラリと変わるとしたら──。その裏にある心理学の「研究の話」、知りたくないですか?

あなたの“話し方”がバレている
「早口だと“せっかち”に見えるよね」
ある日、リモート会議で同僚にこう言われてハッとしました。自分では効率よく伝えたつもりなのに、相手には“落ち着きのない印象”を与えていたのです。
こんな経験、あなたにもありませんか?「声が落ち着いてて安心する」と言われたり、逆に「なんかテンション高くて疲れる」と指摘されたり…。実はこれ、私たちが普段、話す“内容”よりも“声の出し方”で印象を判断されている証拠なんです。
心理学ではこれを「パラ言語的特徴」と呼びます。声の高さ、話すスピード、抑揚など、言葉以外の情報が、相手の第一印象を左右する大きな要因になっているのです。
「そんなことで性格までバレるの?」と思うかもしれません。でも、最新の研究では、“声”だけで相手の性格をかなりの確率で推測できることが明らかになっています。
次の章では、実際の心理学研究をもとに、「声が第一印象に与える影響」の具体例を紹介していきます。あなたの声、思っている以上に“語っている”かもしれませんよ。

科学が証明した“声の印象”のすごさ
「こんにちは、はじめまして、よろしくお願いします」
たったこの一言だけで、その人の性格がある程度わかってしまうかもしれない──。そんな衝撃の研究結果があるんです。
2019年に発表された心理学研究「発話速度と声の高さが特性推論に及ぼす影響」では、合成音声を使って、声の高さと話すスピードによって人が相手の性格をどう判断するかを実験的に調べました。
結果は驚くべきものでした。
話すスピードが速い人ほど、「外向的」「頭の回転が早い」「挑戦的」といった積極的な性格に見られやすく、逆にスピードが遅いと「穏やか」「協調性がある」「丁寧」といった印象を持たれる傾向がありました。
さらに声の高さにも注目。声が高い人は「神経質」「不安定」と受け取られやすく、声が低い人は「落ち着いている」「信頼できる」と見られる傾向が強かったのです。
そして、この性格判断は“直感”だけではありません。研究では、「声から受ける印象(例えば“せっかちそう”“大人っぽい”など)」を経由して性格を推測する「二段階推論モデル」が示されました。
つまり、私たちは無意識に「早口=せっかち=外向的」といったプロセスで相手を評価しているというわけです。
第一印象が大きな影響を持つビジネス、恋愛、面接などの場面で、この“声の印象”は強力な武器になります。逆に、無自覚な声のクセで損をしていることもあるかもしれません。
では、どんな声の出し方が「信頼感」や「好感度」を高めるのでしょうか? 次の章では、具体的な“印象アップの話し方テクニック”を紹介します。

印象を変える“声”の使い方
「声って変えられるの?」と思うかもしれません。でも実は、ちょっとしたコツを押さえるだけで、あなたの印象は大きく変わるんです。
まず意識したいのは、話すスピード。緊張すると早口になりがちですが、相手に安心感や信頼感を与えたいときは、「ほんの少しだけゆっくり」を心がけてみてください。コツは一語一語をしっかり発音すること。これだけで「落ち着いた人」という印象を与えることができます。
次にポイントとなるのが、声の高さです。高すぎると「落ち着きがない」「神経質」と思われがち。逆に、やや低めの声は「頼りがいがある」「大人っぽい」といった好印象につながります。腹式呼吸で話すと、自然と声のトーンが安定し、無理なく落ち着いた声になりますよ。
そして大切なのが、TPOに応じた話し方です。たとえばビジネスシーンでは、明るくて丁寧なトーンで、ややスローペースで話すのが効果的。一方で、友人との会話では、テンポよく、感情を込めて話すことで親しみやすさが伝わります。
こうした「声による印象操作」は、実はAI音声やナビゲーションボイス、カスタマーサポートの人工音声にも取り入れられている技術です。つまり、“声の印象管理”は今や人間にもAIにも求められるスキルなのです。
あなたの声は、あなたの第一印象そのもの。少し意識するだけで、相手の反応がまるで変わってくるはずです。
声の高さや話すスピードといった“話し方のクセ”は、あなたの第一印象や性格イメージを大きく左右し、ビジネスや人間関係においても強力な武器になるため、TPOに応じた声の使い方を意識することが重要です。
著者:橋本和奈実・古屋健
タイトル:発話速度と声の高さが特性推論に及ぼす影響――二段階推論仮説に基づいて――
研究説明:
▶本研究では、合成音声を用いた実験により、発話速度と声の高さというパラ言語的特徴が、聞き手の性格推論にどのような影響を与えるかを分析。