「え、こんな人がひったくり犯なの…?」
以前、知人が昼間の商店街でひったくりに遭いました。被害に遭ったのは60代の女性、犯人は原付バイクに乗ってさっとバッグを奪い、そのまま逃走…。ニュースではよく聞くけれど、いざ身近に起きると恐ろしいものです。
そして私はこう思いました。「ひったくりって、どんな人がやってるんだろう?」
この記事では、実際の研究データに基づき、「ひったくり犯の特徴」を徹底解説。犯人の年齢や職業、前科の有無まで、明らかになった“驚きの実態”を紹介していきます。

ひったくり犯の増加傾向と研究の背景
最近、ひったくり事件が増えてきていることをご存じですか?
警察庁のデータによると、令和4年のひったくり事件は前年比で約1.3倍に増加しました。特に都市部では、昼夜問わず人通りのある場所で発生しており、被害者が転倒してケガをするなど、身体的な危険も高まっています。
でも実際、「どんな人がひったくりをするのか?」という点については、あまり知られていないのが現状です。
そんな疑問に答えるため、山口県警の科学捜査研究所が、全国9県で検挙された379人のひったくり犯を対象に実態調査を行いました。この研究では、性別、年齢、職業、前科の有無といった犯人の特徴を詳細に分析し、共通するパターンや傾向を明らかにしています。
この調査結果は、犯人の行動や属性から次の犯行を予測したり、地域の防犯対策に役立てたりするための重要な手がかりとなります。つまり、「ひったくり犯の実像を知ること」は、わたしたちが安全に暮らすための第一歩になるのです。

犯人像の実態 〜 年齢・職業・前科の傾向 〜
では、実際にひったくり犯にはどのような傾向があるのでしょうか?
山口県警による379件のデータを分析した結果、まず驚くのは「圧倒的に男性が多い」という事実。犯人の96%以上(366人)が男性で、女性はわずか13人に過ぎません。
次に年齢層ですが、もっとも多かったのは20代で全体の約35%(134人)。次いで30代が76人、10代が64人と続きます。つまり、若年層がひったくり犯の中心を占めているのです。
さらに注目すべきは「職業」と「前科」の項目。犯人のうち無職が216人と過半数を超え、有職者(138人)や学生(25人)よりも圧倒的に多い結果となっています。そして前科ありの犯人は全体の約62%(234人)にのぼり、再犯リスクの高さもうかがえます。
こうしたデータを見ると、ひったくりという犯罪は「突発的な犯行」ではなく、「生活の中で慢性的に追い詰められている人」が行っている可能性が高いと考えられます。
若くして無職で、過去に犯罪歴がある――このような属性を持つ人々に対する社会的な支援や、早期の介入が、ひったくり犯罪を未然に防ぐために必要だと言えるでしょう。

犯行パターンと今後の対策
では、実際のひったくり犯たちはどのような手口で犯行を行っているのでしょうか?
今回の研究では、分析対象の379人すべてが「単独犯」であったことがわかっています。グループで計画的に行動するよりも、個人で突発的に動くケースがほとんどだというのは、非常に特徴的です。
また、年齢層によっても微妙に傾向が異なります。たとえば10代の犯人は、学生の割合が比較的高く、犯行が「好奇心」や「軽い気持ち」から始まる可能性も考えられます。一方で30代以降になると、前科のある無職の割合が高まり、生活の困窮や依存症といった複雑な背景が絡んでくることも少なくありません。
こうした「犯行パターン」と「犯人像」の分析は、今後の防犯対策や再犯防止施策を考えるうえで非常に有効です。
たとえば、若年層には学校や家庭での教育・福祉的支援を。中高年層には、就労支援や地域見守り体制の強化など、年齢層に応じた対策が求められます。
また、警察や自治体がこのようなプロファイリングデータを活用し、ひったくりが起こりやすいエリアのパトロールを強化するなど、現場レベルでの防犯もさらに精度を高めることができるでしょう。
犯罪の背後にある人間像を理解し、社会全体で対策を考えていく――それが、ひったくりという身近な犯罪を減らす最短ルートなのです。
ひったくり犯罪は令和4年に急増しており、犯人は20〜30代の無職男性が中心で、前科を持つケースも多い。犯行は単独で行われることがほとんどで、年齢層によって背景も異なる。プロファイリングによる犯人像の把握は、防犯・再犯防止のために重要であり、社会全体での対策が求められる。
小野修一(2023)『ひったくり犯の犯行特徴と犯人像推定』山口県警察本部科学捜査研究所
▶本研究は、全国9県で検挙された単独のひったくり犯379人のデータを分析し、年齢・性別・職業・前科の有無などから犯人像を類型化。プロファイリングの精度向上と再犯防止に向けた知見を提示した。