「お前っていつも“利用される側”だよな」って言われたこと、ある?
昔、バイト先で言われた一言が、ずっと心に引っかかっていました。
「真面目なのに、なんでいつも損してんの?」
確かに、自分だけ率先してシフトに入ったり、面倒な仕事を引き受けたり…。誰かが得して、自分は疲弊してる。これって“搾取”じゃないのか?って思ってたんです。
そんな時に出会ったのが、「囚人のジレンマ」を使った搾取の研究。これがめちゃくちゃ面白くて、「え、これ俺の人生か?」ってくらい刺さりました。

囚人のジレンマって、単なる心理テストじゃない
「囚人のジレンマ」って聞くと、高校の倫理や心理学の授業を思い出す人もいるかもしれません。
でも実は、社会の“搾取関係”を数式で説明できる、れっきとした理論モデルなんです。
今回紹介するのは、東京大学の研究チーム(藤本悠雅さんと金子邦彦教授)が発表した超画期的な研究。
彼らが明らかにしたのは、
「最初は対等な関係でも、相手との“学習”の中で、搾取関係が勝手に生まれてしまう」
という驚きの事実です。

対称に始まるけど、いつの間にか非対称に
この研究では、二人のプレイヤーが「協力するか」「裏切るか」を選ぶ“囚人のジレンマ”ゲームを繰り返します。
しかも、お互い相手の行動を学習しながら、自分の利益を最大化しようとするんです。
で、最初は「ほぼ同じ条件」だったはずの2人。
でも、ほんの少しの初期戦略の違いが、何度もの繰り返しの中でどんどん増幅していって、
一方は“心が狭く”なり、
一方は“やたら寛容”になり、
最終的には「裏切っても許される人」と「裏切られても許す人」に分かれてしまうんです。
これってまさに、「職場でいつも押しつけられる人」や「恋愛でいつも都合よく使われる人」の構造と似てませんか?

じゃあ、どうしたら“搾取される側”にならずに済むの?
この研究の核心は、
「搾取は先天的な能力差じゃなくて、後天的な“学習のズレ”から生まれる」
という点です。
つまり、最初から“搾取する側・される側”が決まってるわけじゃない。
むしろ、最初の小さな“優しさ”や“譲歩”が、どんどん搾取の種になっていくんです。
だからこそ、重要なのは 「学習の仕方」。
相手に合わせすぎず、裏切りには適度に“しっぺ返し”をする。
そうすることで、対等な関係を保ちやすくなります。
おわりに:自分を守るための“少しの厳しさ”を持とう
20代〜30代の男性にとって、仕事・人間関係・恋愛、どれをとっても“対等な関係”を築くのってけっこう難しい。
でもこの研究が教えてくれるのは、「ちょっとした初期の対応が未来を大きく変える」ってこと。
あなたが「また損したかも…」と感じることがあれば、
それはあなたがダメなんじゃなくて、“寛容すぎる学習”をしているだけかもしれません。
自分を守るために、ちょっとだけ“心を狭く”しても、いいんです。
参考文献
1.Yuma Fujimoto, Kunihiko Kaneko「Emergence of Exploitation as Symmetry Breaking in Iterated Prisoner’s Dilemma」(Physical Review Research, 2019)
▶互いに学習することで、対称だったプレイヤー間に搾取関係が自然と生まれる仕組みを、理論モデルとシミュレーションで示した研究。